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 複雑性外傷後ストレス障害 Complex Post-Traumatic Stress Disorder(CPTSD)

CPTSDの主要症状

CPTSDの主要症状は、PTSDの主要症状を包含し(詳しくはPTSDの項参照)、各種の人格障害や不安障害、うつ状態躁鬱病、自己愛の欠落や解離性の障害を網羅します。以下で、主要症状を七つに分けて詳しく見てみましょう。

情動・衝動の調節に関する障害

 自分の感情を抑制しつづけなければならなかったため、情動のコントロールが取りにくくなります。そのため、抑うつ状態が続いたり、鬱から操へ、操から鬱へと鬱病躁鬱病に近い症状が現れます。怒りは強く抑制されていたので、突発的に怒りの感情が荒れ狂ったり、向けるべきで無い相手に必要もないほど怒ったりしてしまいます。  自分を愛せていないため、自殺願望や自殺念慮があり、行為や行動で自分を傷つけてみたり、自分を破壊したい衝動、危険な状況に自ら飛び込んでみたい衝動にかられます。  
 また、性的な関わりの距離をとれなくなり、過度で自己破壊的な性行動や性倒錯に耽ることがあります。  

注意・意識に関する障害

 軟禁生活とも言えるような環境の中で、日常的に受けた暴力、暴言、心理的圧力などの虐待から、「魂を守る」ために、人は「思い出したらとても生きていけない」と思えるような記憶を自分自身の意識のなかから追放します。PTSDとCPTSDの違いは、CPTSDの場合は、記憶の隠蔽がより広範囲にわたるということです。被害者は記憶を失い、虐待的環境から脱出したあとでもしばしば日常生活の記憶に欠落を生じます。
 また、自分の周囲には透明な膜や壁や檻やベールがあり、自分はその中から人々を見ている、現実の中で生活している実感がどうもわかない、この手は自分の手だろうかと感じて、傷つけてみたい誘惑にかられるなどの、離人症的な症状が日常生活を静かに覆います。

身体化の障害

 言葉で言えない重度のストレスは、しばしば身体をも冒します。加えられたトラウマを、物言わぬ変わりに身体が表現します。繰り返しあらわれる痛みは、かつて加えられた怪我を暗示するように続くこともあります。
 消化器系の炎症、潰瘍など、慢性的な頭痛など……あるいは喘息や加換気症候群。歩行障害、き起立調整障害、どもりや失語などの転換症候。性的不能や不感症、あるいは性欲動の昂進に悩まされます。

自己認識に関する障害

 繰り返し味合わされた敗北感、恥辱感、罪悪感や絶望感……それらによって、被害者の自己規定は重大な歪みを生じてしまいます。  自分には自分を守ることさえできないという無力感。仲間を見捨ててしまった罪悪感。自分のうかつな行動によってそれが起きてしまったという罪責感。本当の自分は醜悪な存在で、人に見せることなどとてもできないという羞恥心。生きている価値などありえないという自己卑下。自分を信じてくれる人などいないという諦め。そして癒すことなど、回復することなどできそうもないほど、自分は壊れてしまったという絶望。
 それら長期の複雑な外傷によって歪められてしまった自己認識で、被害に遭う以前の、本来の自己規定ではありません。

加害者についての認識に関する障害

 長い長い加害者との生活で、加害者に対する客観的で正確な認識はなかなかできません。被害者は、加害者をしばしば理想化します。長期に渡って性的虐待を受けたある女性は、「パパは、私に男というものは何であるか教えてくれたのよ」と、父を告発した妹に対して怒りをぶつけました。  
また、加害者と離れたあと、被害者はよく「加害者を傷つけてやりたい」という願望にとらわれてしまいます。  あるいは、加害者と同一化したり、加害者の信念を取り入れて、力で人を支配するのは普通のことだと考えていたりします。

他者との関係における障害

 何度も何度も信頼を裏切られ、何度も何度も希望を打ち砕かれて……そのうち被害者は、他人を信用するというものはどういったことなのか、それ自体がわからなくなります。他者は信頼できず、心を開くべき存在ではありません。
 また、生活していくなかで、他人を犠牲者にしてしまったり、あるいは再び自分が暴力事件やいじめ、性犯罪の被害者になるなど、犠牲者になってしまいがちです。

意味体系(世界観)における障害

 以前信じていたものは、繰り返された打撃、繰り返された敗北によって、その力を失ってしまいます。生きることを支えていてくれた信念体系の喪われ、自暴自棄が繰り返される可能性が高く、世界は残酷な神が支配しており、絶望がその世界を覆っています。

消えていたので転載